前回、「長期修繕計画を見直し、管理費の値上げを決定した」とお話ししました。
「修繕積立金の間違いでは?」
間違いではありません! 今回はこの点を解き明かしていきますね。
【それって いつ誰が決めたの?】
管理組合の収入は、①管理費②修繕積立金③使用料、の3つです。わたしが暮らすマンションでは、使用料のほとんどは駐車場にかかわるもので年間340万円。大きな収入源です。問題はその繰り入れ先。250万円を管理費に入れており、修繕積立金には残りの90万円だけでした。
平面駐車場と違い、機械式駐車場はとにかくおカネがかかります。自宅マンションの計画では、築45年目の建て替えまでの今後23年間で、部品交換等に3500万円が必要とされています(注)。そしてこの費用の出どころは、まずは駐車場使用料から、のはずです。標準管理規約29条を見てみましょう。
「駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる」(機械式駐車場については独立会計にすることもあり)
ところが実際には、使用料の7割以上は管理費に充当されている―。管理規約や使用細則を調べても、繰り入れ先の記載はありません。やっと見つけたのが、管理組合の第1回総会に付議された予算案の表。その欄外には「駐車場使用料は○○円を管理費に、残りを修繕積立金に繰り入れる」との記載が…。以来22年間、この通りに繰り入れが行われ、長期修繕計画の見直しに着手して初めて「あれ?」となったわけです。
【駐車場使用料は修繕積立金に】
5月の臨時総会で、「駐車場等使用料の繰入先等変更の件」が承認されました。修繕積立金会計にとっては年間120万円、30年間では3600万円の増収になります。赤字の6割はこれで解消。さらに長期修繕計画全体の工事項目・金額を見直し、機械式駐車場の使用料を上げることで、修繕積立金については「値上げ不要」との結論になりました。
一方の管理費は、駐車場使用料の繰り入れ減額により赤字に転落です。組合員に理解を求め、平均月3500円の値上げが決まりました。
以上が、長期修繕計画の見直しで管理費の値上げに至った経緯です。長年覆い隠されていた管理費の大赤字。「払ったら後は管理会社にお任せ」ではなく、その使い道にまで関心を持たなければダメなのだと、あらためて痛感しました。
そして将来のための貯金(修繕積立金)と日々の生活費(管理費)はキチンと仕訳し、貯金はよほどのことがない限り手をつけないこと。後で苦労するのは自分たちですから。
次回以降は、修繕計画の作り方、工事項目・費用の見直し等についてお伝えします。
(麻生&安田)
(注)メーカー試算。国交省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、18~22年で更新となっているが、単純な仕組み(ピット3段昇降式)なので長持ちすると思われる
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